昨日のNHKスペシャルは初代宮内庁長官・田島道治
による昭和天皇拝謁記だったが、いろいろと衝撃的な
内容があった。
昭和天皇が戦争に対する深い悔悟の念にさいなまれ、
終戦から7年後の独立回復の式典で、国民に深い悔悟と
反省の気持ちを表明したいと希望されていた。
軍の「下克上」を早く根絶しなかったことを後悔されて
いたり、退位したいと漏らされていたり、だが吉田茂が
反対して「反省」よりも「希望」を重んじた言葉に変わ
ったという。
中には、支那事変や南京でひどいことが行われていると
いう事をひくいその筋でない者からウスウス聞いては
いたという言葉があって、市ヶ谷裁判で公になった事を
見れば実にひどいと仰っている。
「ひくいその筋でない者」とは誰なのか?
「ウスウス聞いてはいた」とは何なのか?
これでは「伝聞」なので一次史料にも二次史料にもなら
ない。
それから昭和天皇は憲法改正が必要だと思っていたが、
吉田茂は安全保障は米軍に押し付けて、日本は倹約して
経済の立て直しだと笑って言っていたのも印象的だった。
番組で出ていたのはあくまでも「敗戦責任」であり、
「道義的な責任」である。
昭和天皇が戦争に反対しても、軍の暴走はもうとっくに
始まっており、政治家が完全に信用を失くし、国民の
圧倒的支持を軍が獲得していたのだから、天皇がそれを
阻止しようとしても無理だっただろう。
天皇主権といっても、「立憲君主」であり、「絶対君主」
ではない。
クーデターで天皇が押し込められれば、日本はもっと
軍国主義に傾いてしまう。
あの時代の「勢い」はもう誰にも止められない。
「勢い」が出る前に、国民を諭す人物が社会の各所に
要るのだが、だからといって軍隊は要らない、主権は
要らない、侵略された場合に戦う必要もないという
人物では話にならない。
だからこそ「憲法」で戦力を統制しておく必要がある
のだが、それもいやだという国民が多いから、結局、
誰も何も反省していないんだなと思うしかない。